冬の森

yosuke0araki2004-02-07

 道庁の新人研修に栗山の森での作業があった。母子里を思い出していた。
 母子里は空知の最北部、朱鞠内の湖畔にある。マイナス41.2℃だったと思うけれど、昭和53年に日本最低気温を記録した集落である。JR深名線廃線になって久しく、その集落は雪の中でひっそり佇んでいた。
 私が、大学の演習林の実習で母子里を訪れたのは、もう6年も前のことである。本州から来て間もない私にとって、北海道の冬の森は、未知の世界だった。
 低温の北海道では本州と異なり、森が吹きだまりになるため雪が溜まりやすい。その雪の上をシールのついたスキーで歩くと、尾根も谷もどこまででも行けるように感じた。知らず知らずのうちに先人が歩いた道だけしか歩けないでいる日常の不便さを感じた。
 樹種も大いに異なっていた。枝は白くないのがシラカンバ。枝まで白いのがタケカンバ。色白で二股かけてるのがトドマツ。浅黒くて一筋なのがエゾマツ。針広混交林だなんて難しい言葉を使わなくても、厳しい冬を耐えている鋭い葉、蔓草や獣との関わりを刻む幹が、白い世界に浮かんでいるのは印象深い。
 雪の下には、一面に笹が眠っていて、そこで醸成される水はいつか流れて、海の生き物をも支えている。こういう壮大な営みに惹かれたことは、私が未だに北海道にいることと無縁ではないだろう。
 自然の前に謙虚に、しかし人間としてできることは何かを問いかけながら歩んでいこう。そう心を新たにした研修の一コマだった。