2004-01-01から1年間の記事一覧

7℃の衝撃

年平均気温を考えるとき、いささか誤差はあるものの私は7℃を基数にしている。 つまり亜寒帯の札幌は7℃、温帯の東京は14℃、亜熱帯の沖縄は21℃。標高は1000m毎に7℃づつ低くなる。もちろん高地でも高緯度地でも夏は30℃近くなることが多いから、温…

文化センターとしての中学校

北海道庁には約8万人の職員がいる。知事部局に2万人、教育部局に5万人、警察部局に1万人。かくいう私もその端くれである。 さらに道内における国の出先機関にも約2万人が在籍している。これらの出先の多くが、北海道一円を管轄しており、知事部局と業務…

J.W.ブッシュ再選

アメリカの大統領選挙は四年に一度。閏年及びオリンピックと重なる。1944年にF.ルーズベルトが3選して以来、トルーマン(民主)、アイゼンハワー(共和)、アイゼンハワー(共和)、ケネディー(民主)、ジョンソン(民主)、ニクソン(共和)、ニク…

木古内トリック

15時07分というのは檜山支庁職員ならば、誰もが知っている時刻である。八雲でバスに乗り換えるにしろ、五稜郭でJR江差線に乗り継ぐにしろ、この時間に札幌を発車するスーパー北斗に間に合わなければその日のうちに江差へ帰ることはできない。したがっ…

BRICs

山本康貴助教授のニュージーランド調査に同行させてもらった2年前のことである。羊の国の土産にと手頃な羊毛製品を探していたぼくは、不可思議なことに気がついた。ニュージーランド土産なのだから、'Made in New Zealand.'の印字のある物が欲しかったのだ…

恵迪寮

恵迪寮というのは北海道大学の学生寮のことである。私は4年間ここに住んでいた。 寮生活には6月からの夏の期と12月からの冬の期があり、期毎に過ごし方を選ぶことができる。特に、どういう部屋に籍を置くかが半年を決定する。私は268期に入寮して27…

文民統制と統帥権の独立

三権分立は、あまりにも有名な言葉だが、モンテスキューの議論の射程を超えて理解されることが多い。彼は、国会を君主の統治権から独立させ、監察機関を強化しようとしただけなのであり、必ずしも統治権(=行政権)が内閣などに集約されるべきだと考えてい…

山の辺の道

台風19号は、大成町太田地区で死者をだすなど、檜山管内にも大きな爪痕を残した。江差の庁舎も、国道228号線・229号線と道道5号線そしてJR江差線が寸断された結果、陸の孤島となった。新しく太い道路と古く細い道路が並走しているのは、歴史ある地域ではよ…

市町村の適正規模

地方自治法は、「地方公共団体は、常にその組織及び運営の合理化に努めるとともに、他の地方公共団体に協力を求めてその規模の適正化を図らなければならない。」としている。しかし、昭和30年頃から半世紀近く市町村の規模はほとんど不変であった。平成の…

第131回 芥川賞選評

今月の文学界に片山恭一氏が興味深いことを書いていた。「世界の中心で愛を叫ぶ」の執筆中にレビナスを読んでいたというのだ。レビナスといえば、ハイデガーの一番弟子である。当時、氏は他にデリダにも惹かれていたという。 私は「世界の中心で」を全く評価…

支庁制度のあり方

昨年の12月、檜山南部の合併協議会から熊石町が離脱するおり、その選択を許容する市町村合併のあり方自体に地域のエゴを感じた。その後の熊石町と八雲町の協議は進展し、来年にも合併するという。対等の新設合併ではあるが、新町名も役場所在地も八雲にな…

日露戦争百年

平成16年は日露戦争開戦より百年にあたる年である。さらに黒船来航による開港から百五十年。開国から半世紀を駆け抜けた日本の大きな到達点が日露戦争であり、それからその倍の年月を経て私たちは今日を生きている。 当時は列強による世界の分割がすすんで…

北海道における大学の再編成

先週、札幌へ行ったら七大戦の開幕式をやっていた。七大戦とは旧帝国大学を前身とする大学(京城・台北の両大学を除く)の体育会が共催する定期大会である。私が一年生のときに北海道大学の主管だったから、もうそれから七年になるのか。過ぎ去りし月日の速…

蝦夷共和国

北方領土問題について国際法では二島返還がおとしどころだと述べたことがある。法的な論理で上手くいかないなら史的な論理で勝負すればいいのだけれど「北方四島は日本固有の領土です」ではどうも弱すぎる。小さな現実に拘らない外交的な戦略が必要になる。 …

地方分権と蘇秦の合従論

以前、道州制について懐疑的に述べたことがある。しかし、私は北海道職員であり、もちろん地方分権を推進すべきだと考えている。 自治体を中央省庁が制御する手段として、カネとヒトの二つがよく指摘されている。まず、歳入は地方よりも国が多いのに、歳出は…

死刑制度

結論から述べると、私は死刑制度を廃止すべきだと考えている。これは、私のことをよく知る人には意外かもしれないけれども。 最も大きな理由は憲法である。死刑は憲法の禁じる残虐な刑罰にあたる。 これに対して判例通説の立場によれば、憲法は残虐な刑罰を…

私の中で構築する文明

日本で和魂洋才といわれていた百年前、韓国では東道西器、清国では中体西用ということがいわれていた。三者は思想の構造が驚くほど類似している。つまり精神的には自国を、物質的にはヨーロッパを優れていると見なし、その良いところだけを採用しようという…

官庁訪問

JRで富山に帰省する途上、東京駅で途中下車した。リクルートスーツで霞ヶ関へ向かう学生らしき姿をみかけた。二年前の自分を振り返り懐かしく感じていた。 国家公務員一種試験合格者=キャリア官僚という偏見が、一般的には流布している。しかし、人事院は採…

士幌高原に吹く風

私と士幌町との関わりは、学生寮が二十余年前に士幌高原に建てた小屋「チセ・フレップ」の運営委員をしていたときに始まる。 士幌高原は、十勝平野と大雪山系の接するところにある。ここチセフレップのすぐそば、大パノラマに臨む三人の像がある。士幌へ来た…

北海道のカレーライス

日本におけるカレーライスの始まりは横浜の海軍カレーだというのが定説である。しかし、それよりも少し前に開校した札幌農学校寄宿舎の舎則には、「ライスは食べるべからず、ただしカレーライスは食べてもよい」という意味の一文が盛り込まれている。日本の…

不破の関

壬申の昔のことである。大化の改新の立役者である天智天皇が崩御すると、その太子である大友皇子と大海人皇子が皇位を争った。弘文天皇と諡される大友皇子の軍は不破の関に防衛線を張る。これに対して大海人皇子は関外の小山に布陣して将兵に桃を配ったとこ…

青春18切符

青春18切符というのは、普通列車乗り放題の切符のことである。おおむね学校の長期休暇の期間中に5回分有効で11500円だから一日あたり2300円ということになる。私が初めてこの切符を利用したのは1994年12月、富山中部高校の友人4人と一緒…

大統領と首相

法学部に在籍中から大統領と首相の相違について友人に質問されることが何度もあった。私の回答は明白である。元首である大統領は、民主的に選出される王様のようなもの。首相(総理大臣)は主席である臣下。だからドイツやフランスのように大統領と首相が並…

第98回文学界新人賞から

ゴールデンウィークは北上・角館・弘前を旅したが、既に散っており、北海道の満開を羨んだ。帰宅すると定期購読している「文学界」の6月号が届いていた。その誌面で発表される文学界新人賞は、モブ・ノリオ氏の「介護入門」が受賞した。 新人賞の選考委員は…

今村均将軍とイラクの自衛隊

オランダ軍とともにサマワに駐留する陸上自衛隊の第一陣は第二師団麾下にある名寄の連隊から選抜された。今村均将軍を司令官とする第16軍がオランダ領インドネシアへ侵攻したときの基幹も第二師団であった。歴史の巡り合わせを感じる。 インドネシアは、太…

人命尊重をもって国策を誤るな

第一次世界大戦といえば20世紀人類の主要な惨禍であるが、その全期間における戦死者よりも、末期に発生したいわゆるスペイン風邪による病死者の方が多いということは意外に知られていない。戦死であるか病死であるかにより、身近な人の受ける衝撃は大きく異…

源氏物語と私

富山中部高校の古典の授業は史記と源氏物語を教材として取り上げている。この難解な古典を読みこなすのが数十年来の伝統だということであったから、18年先輩の田中耕一氏も、24年先輩の高橋はるみ氏も、高校生の頃の国語の時間にこの壮大な人間ドラマに触れ…

配分から分配へ

私が初めて経済学を学習したのは高2の頃の公民の時間だった。担任でもあった森秀裕先生は受験に直接関係のない教科であるのをいいことに教科書は無視して朝鮮史だとか日独の選挙制度比較だとか自分の興味の趣くままに勝手な授業をしていた。しかし、これら…

和歌について

和歌。大上段に構えてしまい途方に暮れている。そもそも私が百人一首を覚えたりしていたのは20年も前のこと。それ以来、和歌について見識を深める機会を得なかった。そもそも人間の内面を伝えるという文学の使命を達成するには原稿用紙百枚は必要だと思う…

道州制特区

最近、FTAや特区制度について耳にすることが多くなった。これまでGATTによって画一的に進行していた国際経済における市場化について地域圏の独自性を重視しようとするのがFTAである。これまで法令によって全国一律でなされていた規制を地域の特性に応じて緩…