少女監禁

yosuke0araki2004-02-12

 数年前に新潟で、9年半にわたり少女が監禁されていたというショッキングな事件があった。新潟地方裁判所がこの事件で懲役14年の判決を出したのは2002年春のことである。
 監禁罪の最高刑は10年、窃盗罪(余罪として万引きが認定された)の最高刑は10年。これを併合罪とすると最高刑は15年になるという論理である。
 私は当時、この判決について非常に違和感を持っていた。併合罪というのは、刑を単純にたすと加重になるために設けられた規定である。監禁罪は10年なのに、たかが万引きによって刑を4年も伸ばすというのは、先に重刑ありということで罪刑法定主義に反する。確かにこの事件の悪質性、被害者感情国民感情を考えればどんな重刑も科すべきであろうが、そういう判断は、立法によるべきであって、司法は刑法の意図するとおりの判決をすべきである。
 その後、2002年秋の東京高等裁判所は、私と同様の考え方で11年の刑を科したので、私は地裁に勝った気でいたが、2003年に最高裁判所は高裁判決を破棄自判して、地裁を支持する14年の刑を被告人に科した。 
 そして先日、法務省は刑法・刑事訴訟法の改正案を明らかにした。これは、国民感情や社会の変化に法律を対応させるものとして一定の評価はできるが、中身には不満もある。
 財産に対する罪に比して、不均衡になっていた生命・身体に対する罪の量刑を高くするという方向性はよい。しかし実際の判決のほとんどが法定刑の下限近くに落ち着く日本の裁判では、単に裁判官の裁量の幅を大きくするだけになる可能性がある。罪に応じて刑の軽重にメリハリをつける必要がある。また、時効25年・有期刑で30年ということになれば未成年で犯した罪でも出所するときは80歳を超える。しゃばから人生を奪うのであり、死刑制度のあり方も視野に入れて議論をする必要がある。