ひょっこりひょうたん島

yosuke0araki2004-03-05

 一年間にわたるNHKひょっこりひょうたん島の再放送が今月で終了する。この再放送を録画・保存するためにビデオデッキを購入した私としては、残念であると同時に、毎週ビデオが確実に作動しているか確認するために土曜の7時25分には帰宅しなければならなかった一年間を思いささやかな安堵の気持ちもある。
 ひょっこりひょうたん島の放送が開始されたのは今から40年前のことである。当時は高度経済成長のただ中であり隔世の感がある。にも関わらずひょうたん島が新鮮さを失わないのは驚異的なことである。そこには世代を超えた文の力が見て取れる。作者の井上ひさしは「手鎖心中」で第67回直木賞を受賞し、第88回からは直木賞の選考委員をしている。いわば日本の大衆文学を代表する作家であるといってよい。さらに博士の声を担当した中山千夏参議院議員も第81・82・83回にわたり直木賞候補となったし(ちなみに第83回は向田邦子志茂田景樹が受賞、赤川次郎も候補だった)、他に魔女ペラ役の黒柳徹子なども起用されていた。
 ひょうたん島の第一期はライオン王国・ブルドキア・海賊・魔女リカ・グレートマジョリタンの各巻からなる。子供たちに特に人気の高かった海賊の巻とグレートマジョリタンの巻に第二期のアラビアンナイトの巻を挟んだのが今回の再放送の構成である。しかし私はブルドキアの巻が好きで、特にブルドキアの独裁者ピッツ長官とダンディーの決闘、そしてピッツの墓にダンディーが花を手向けるのは、ひょうたん島最高の場面だと思う。安易に子供に迎合することなくブルドキアも再放送してほしかった。
 ひょうたん島の魅力の大きな要素になっているのは登場人物の個性である。みんなそれぞれいいところがあるんだけど、結局は現実を認識して有頂天なみんなを支えているのは、博士とダンディーだけだというところがおもしろい。同じくNHK人形劇でやっていた三国志において、凡人の劉備諸葛亮の頭脳と関羽の男気が支えていた同じ図式が、ドンガバチョ・博士・ダンディーにも当てはまる。人間関係の一つの方程式なのだろう。
 劇中歌もひょうたん島の魅力だ。一番有名なドンガバチョの「明日の歌」だけれども、博士の「もしもボクに翼があったら」は科学と人間のあり方までも考えさせてくれる素晴らしい歌だ。
 今からでも遅くはない。より多くの人とひょうたん島の魅力を共有したい。