桜蔭

yosuke0araki2004-03-27

 毎年、この季節になるとサンデー毎日などで高校別の大学合格者数が報じられる。それによれば2004年の東大入試では桜蔭高校が躍進したという。
 桜蔭高校が東大合格者を倍増させて、男子御三家などとの互角に人数を競うようになったのは、1994年のことだったと記憶している。今や押しも押されぬ進学校であるが、一学年300人にも満たない女子高だということを考えるとその実績は驚異的である。
 そもそもこの中高一貫校は、御茶ノ水女子大学とその前身である東京女子高等師範学校の同窓会である桜蔭会が創ったものである。桜蔭は、この伝統もあり御茶ノ水のOGである優秀な教員を多く受け入れることができる立場にある。しかし私はカリキュラムこそが、この学校の学力向上の最大の要因だと思っている。例えば数学においては、全員が微分積分を履修することになっている。一般的に女子が数学を苦手とする傾向にあるにも関わらず、私立文系志望者にまで理系数学を強いるのは一見無理があるようにも感じられる。しかし文系の学問である経済学において必須のものとされているというだけでなく、微分積分は次元を変換するというダイナミックな思考の営みである。物知り顔の人が「試験勉強だけできても実際の生活の中では役に立たない」と言ったりもするけれど、困難に遭遇したとき大きな武器になる思考の転換は微分積分を通しても鍛えるチャンスはある。安易な効率性を追求せず、真の学力・真の生活力をつけさせようとする校是が感じられる。 
 公園に空き缶が落ちていました。最初に桜蔭の生徒が見つけたけど無視して通り過ぎていきました。次に女子学院の生徒が見つけて缶蹴りをして遊びました。最後に双葉の生徒が見つけてゴミ箱に捨てていきました。
 女子学院で作られたとされる小話である。一般的な感覚に訴えかけているのだとは思うが、こういう話は対象のアイデンティティーを過度に縛り付けてしまうことになる。桜蔭で長年にわたって蓄積されてきた全人教育の理念、こういうものをきっちり評価できないということこそが、逆説的ではあるがむしろ偏差値に囚われた考え方だと思う。