杜の都

yosuke0araki2004-04-04

 朝の連続テレビ小説70作目「天花」が始まった。ヒロインに変な名前を付けて、それをそのままタイトルにするという常套手段には辟易しているけれども、藤澤恵麻はいい。「ほんまもん」の池脇千鶴以来の好印象で、天花を見てから気分よく出勤できそうだ。
 舞台となるのは仙台。ダイヤモンド社が毎年実施している住みたい都市ランキングでは京都・札幌と並んで仙台が上位を占めるという。こういうランキングでは政令指定都市レベルの規模が有利になりやすく、一概にランキングのとおり居住環境がいいとは断言できないが、一定の指標にはなるだろうと思う。また、このいずれの三都市にも居住経験を有する私にとって、仙台は最も感性を揺さぶる都市である。
 仙台は他のどの都市圏よりも東京に近い。中学生の私が在住していたバブルの時代、身近なあちこちで東京に新幹線通勤している人の話を聞いた。そうでありながら、東北独特のコンプレックスが併存している。南西からの歴史のうねりに常に追われてきたそういう感覚がある。
 もっとも、私の仙台時代に前後して放映された大河ドラマ独眼竜政宗」「炎立つ」の二つの時代は東北地域が大きくはばたこうとしていた。しかし奥州藤原氏鎌倉幕府に滅ぼされるし、伊達氏は江戸の幕藩体制に組み込まれてしまう。仙台やその近郊の多賀城・塩釜・松島などに散らばる秀衡や政宗の夢の欠片が、この街の時空の重みを感じさせる。
 92年に富山へ去った私は、98年に久しぶりにマンションや学校のある駅裏地区を訪れた。見慣れた風景が今もそこにあるのに、知っている人はもう誰もいない。一抹の寂しさはあったけれども、その風景を写す自分の眼の中に6年の歳月に歩んできた道を顧みて感慨を禁じ得なかった。
 先月、また駅裏を歩いた私はほとんど同じ感慨をもちながら、そのことに愕然としていた。仙台再訪からもう6年、同じだけの歳月を経たというのに街を見つめる眼が変わっていないというのはどういうことか。それは、自分が前の6年ほどには成長していないということではないだろうか。あらためて自分の生き方を見つめかえす必要を感じた。
 この12年の間に仙台には二度しか行けなかった。しかし江差からは近い。今年はもう一度訪れようと思う。その時、自分の眼に仙台の街がどう写るか。それはこれからの私の生き方にかかっている。