道州制特区

yosuke0araki2004-04-05

 最近、FTAや特区制度について耳にすることが多くなった。これまでGATTによって画一的に進行していた国際経済における市場化について地域圏の独自性を重視しようとするのがFTAである。これまで法令によって全国一律でなされていた規制を地域の特性に応じて緩和しようとするのが特区制度である。これらは、国際組織−国家−地方自治体の三段階構造を相対化し主権の意義を問い直すものである一方、その選択権を有する国家の側に新たな役割を認めるものでもある。
 津々浦々にある特区の中で衆目を集めるのが道州制特区である。北海道に大幅な権限委譲をし、それが上手くいったならば、今の都道府県を道州に改組しようという壮大な地方分権の試みである。
 この案に対しては当然、批判がある。霞ヶ関に勤務する私の友人は、北海道こそ中央からの財政支援に支えられている地域であり、もっとも道州制に向かない地域であると言っていた。それは理に適っているし、財政再建団体への転落も囁かれる時期の悪さもある。しかし、もし本当に北海道に独自のアイデンティティがあるならば、道州制を推進するべきだと思う。問題は、生活水準を落とす覚悟があるかどうか。道民に対して、道州制になると生活水準を落とさなければならないことをしっかり伝える義務が道庁にはある。
 私は現時点における道州制には疑問を感じているが、それは独自のアイデンティティがあるかどうかということである。例えば、私のいる渡島半島は文化的にも歴史的にも東北地方に近い。以前、北海道スタンダードという言葉が流行ったけれど、この地域におけるそれは、東京スタンダードに代わる札幌スタンダードでしかない。都道府県境よりも道州境がより高いものになると、双子都市である函館と青森は分断されてしまうことになる。「北海道は単体で」という前提ではなく、住民の実態を見据えた区割りについての議論がなければ道州制は始まらないと思う。もともと小国の連合体であり、旧国家=州となっているドイツやアメリカとは、日本は異なるのだ。