青春18切符

yosuke0araki2004-05-16

 青春18切符というのは、普通列車乗り放題の切符のことである。おおむね学校の長期休暇の期間中に5回分有効で11500円だから一日あたり2300円ということになる。私が初めてこの切符を利用したのは1994年12月、富山中部高校の友人4人と一緒に京都へ日帰りしたときのことだった。京都で浪人していた96年には、帰省のために一人で5回分使い切るようになった。
 この切符の利用方法を抜本的に変革したのは97年の大学入学後に夜行快速の存在を知ったときである。昨年廃止された函館−札幌のミッドナイトの他、新宿−村上のムーンライト越後、東京−大垣のムーンライトながら、京都と高知・松山・福岡・広島・出雲市を結ぶ各ムーンライトが時刻表には明記されている。これらを利用すれば宿泊費もかからず、しかも寝ている間に何百キロも移動できるため日本中を縦横無尽に旅行できることになった。2000年12月には46都道府県県を普通列車で走破した(沖縄は鉄道がないので2001年1月に航空機を利用した)。
 もちろん普通列車で安眠できる可能性は低い。しかし品川駅でのムーンライトと並走する大垣夜行の席取りバトルと、それに続く見知らぬ4人の夜通しの会話は何度経験しても新鮮だ。早朝の駅前温泉の温かさも捨てがたい。慣れてくるに従って、夜行では連泊しない、だからフェリーやユースホステルを組み合わせるようにはなったけれど、旅の濃さということでは夜行に勝るものは知らない。
 学生時代に、なぜ普通列車なのか聞かれたことがある。私は、例えば帰省について考えれば、航空機と比べて概ね一日余計に要するけれど一万円以上割安だから、一日一万円以上の日給でバイトしているのと同じなんだと答えた。これは納得してもらえたけれども、重要なのはただ普通列車に乗っているだけでも快楽は得られるということだ。車中は暇だと思う人もいるだろうけれど、やることはいっぱいある。まず読書。単調な車輪の響きが家にいるときよりもよっぽど読書に集中させてくれる。旅の始めに二三の文庫を持っていったのに、旅の終わりには十数冊がバックに入っているということはよくある。まとまった読書の機会としては列車は最適である。また、変わりゆく車窓の風景も見飽きない。二度三度と旅すると、前にきたときの自分が懐かしくなり、そのセンチメンタルが心地よい。さらに、たまたま前に乗り合わせた女の子が可愛かったりすると嬉しくなり、その地域に対する好感度はそれだけで一気に高まる。ときには酒を飲むこともあるし、4人掛けを独占して昼寝のときもある。それらを全て含む旅が楽しい。