大河ドラマ義経

yosuke0araki2005-02-10

 歴史の浅い北海道はNHK大河ドラマの舞台となったことのない稀有の地域なのだが、奇しくも私の住んでいる檜山郡江差町に縁の作品が続くこととなった。新撰組の副長だった土方歳三近藤勇斬首の後、榎本武揚と共に蝦夷地に渡る。彼らにとって戦いの切り札になるはずだったのが開洋丸だった。この当時の日本で最大の軍艦は、江差沖に停泊中に暴風雨のため沈没。制海権を失った旧幕府軍五稜郭要塞は、乙部に上陸した新政府軍の攻撃により陥落する。眼下に再建された開洋丸が浮かぶ檜山爾志郡役所前には、土方歳三嘆きの松が立っている。また、平泉の高館で藤原泰衡の強襲に遭った源義経は、北へ逃れて津軽半島三厩から江差に渡ったとされている。江差で馬を乗り捨てて、さらに船で北上するのだが、乙部まで追いかけてきた静御前とは、ついに会えなかったという。
 義経の魅力には、その行動圏の広さがあるかもしれない。源平合戦の主戦場は瀬戸内の兵庫県香川県山口県であり、義経が居を構えたのは京都府岩手県・神奈川県であった。これらの点を結んだ線上の地域は、北海道を含めて大多数になることだろう。この運動量に匹敵するのは、京で反北条の挙兵をして、鎌倉で反後醍醐の挙兵をして、九州多々良浜から再起した足利尊氏だが、尊氏にはダーティーなイメージが付きまとう。多くの日本人が地元のヒーローと感じられるということでは義経には及ばないだろう。
 武士の時代の終わりと始め、700年の隔たりがある「新撰組!」と「義経」は、いずれも香取慎吾滝沢秀明というジャーニーズ事務所の人気者を起用したわけだが、女優は見違えるものとなった。「静御前」には朝の連続テレビ小説でデビューした清純系の石原さとみ、「うつぼ」には三年B組金八先生の頃から演技派とされている上戸彩、「能子」にはモーニング娘を卒業してからもハロープロジェクトの中心的な位置を占めるアイドル後藤真希が起用されている。これでは中越典子小池栄子上原美佐などはもちろんのこと、新撰組田畑智子や優香も翳んでしまう。こういう義経を取り巻く女性陣の豪華さを、2002年の松嶋菜々子や2006年予定の仲間由紀恵と対比してみたい。2002年・2006年いずれの作品も前田利家山内一豊という割と地味な、しかし勝ち馬に乗って大名としては成功した武将を取り上げている。信長・秀吉・家康のことはわりかし知っていて、もう少し掘り下げたい30代40代には面白いのではないか。対する義経に出演する10代美少女に引き寄せられるのは、せいぜい20代まで。しかも戦国時代よりも馴染みの薄い源平を扱うとなると、歴史と女優のギャップができる危惧がある。視聴率がどうでるか、興味深いところだ。「三姉妹」「春の波濤」「花の乱」など女性が主人公になると大河ドラマは低迷するというのは、周知の事実である。ここ数年の作品のどれが頭をだすかによって、そういうセオリーが変わるかもしれない。