日・中・韓の領土問題

yosuke0araki2005-04-09

 中国との尖閣諸島の問題、韓国との竹島問題が教科書における記述と相俟って関係を険悪なものにしている。しかし中国・台湾、韓国そして日本政府の主張はいずれもバランスのとれていないものである。もちろん外交とは、世界の普遍的な公正を構築することではなく自国の利益を最大化する営みなのであるから、各政府がその国の立場を頑なに主張するということは、やむ得ないことである。しかし自国政府の主張を、それぞれの国民が唯一の真実として受け止め、それをもって隣国に接するのならば、アジア全体にとって不幸なことである。
 尖閣諸島東シナ海にせり出した中国の大陸棚上にある。これに対して、竹島隠岐から大和堆へ連なる陸塊の一部である。したがって地形的にみるならば、前者を中国領・後者を日本領とするのが妥当である。他方で、尖閣諸島は沖縄・八重山列島の近くにある。これに対して、竹島隠岐よりも鬱陵島に近く、本州よりも朝鮮半島に近い。したがって距離的にみるならば、前者を日本領・後者を韓国領とするのが妥当である。もし仮に中韓が一つの国であれば、どちらかの島嶼を取って痛み分けという解決もあるだろうが、交渉相手が違うからそういうわけにはいかない。
 もっとも厄介なのは、日本による領有の経緯である。確かに日本政府の主張するように、尖閣諸島は1895年に、竹島は1905年に日本が領有を宣言している。しかし、その領有の時期は日清・日露の両戦争と重なる。同じ1895年に「正当な」条約に基づいて領有を開始した台湾について、今でも日本領だと主張する日本人がほとんどいないのに、台湾のすぐ近くにある尖閣諸島のみは日本領だと信じて疑わない日本人がほとんどなのは一体どういうわけであろうか。竹島についても、既に1900年には韓国が独島として領有していたにも関わらず、日本が編入しても意義を唱えなかったのは、既に第1次日韓協約によって韓国政府が無力になっていたからである。竹島が日韓の合意に基づいて日本領となったというなら、「正当な」条約に基づいて併合した韓国本体も未だに日本領だということになる。韓国から切り離して竹島のみの領有を主張する根拠はどこにあるのだろうか。つまり、日本政府の主張の最も有力な要素である歴史的経緯は、植民地支配と表裏の関係にあり、これそのものが中韓両国の感情的な反発を招くものなのである。
 私も殊更に外国の肩を持って自国を貶めるつもりはない。中韓が政治家の靖国参拝を批判するのは日本に対する勉強不足による誤解以外のなにものでもない。核兵器や徴兵制を有する国が、自衛隊の一挙手一投足にまで疑いの目を注ぐのも、度を超えた干渉である。しかし、日本人が知識としては持ちながら、あまり実感していない二つの大きな事実;当初の意図によらずも結果として周辺諸国を侵略したということ、その恒常的な戦争の結果として世界大戦があり日本はその敗戦国であるということは、しつこいくらいに再認識しなければならない。ポツダム宣言に国体護持の他には留保条件をつけなかった日本は、その宣言にあるとおり本州・北海道・九州・四国以外の領有を主張できる立場にはないのだ。
 日中韓それぞれの政府には、水掛け論になるような領有の経緯の議論から脱却し、未来志向で建設的な議論をする責任があるだろう。そしてそれ以上に、それぞれの国民が冷静に自他の主張を比較衡量することが大切である。