バブル経済

yosuke0araki2005-05-01

 バブル経済というとき、1980年代後半のジャパン・アズ・ナンバーワンと称された時代を想起する人がほとんどであろう。しかし貨幣経済実体経済から乖離するというのは特殊な現象ではない。古くは18世紀初頭のイギリスにおいて南海泡沫事件があった。ウォルポールによって処理されたこの事件以降、株式などの証券市場発展の歴史はバブル経済の危険と隣り合わせだったのである。
 日本にとっては失われた10年であった1990年代、アメリカ経済は景気の変動を無視するような長期にわたる成長をつづけた。このアメリカの成長を説明した経済理論がニューエコノミー論である。つまりITの導入により在庫を抱え込むという景気の変動要素をカットすることができるようになったというのである。なるほどITは経済環境を一変させたし、在庫は経済研究の中では必ず考慮に入れなければならない概念である。しかし私は、景気の変動というマクロ経済の大問題をわずか2語で解決することには強い違和感を覚えた。そして今世紀に入りアフガン・イラクとの戦争でアメリカは疲弊する。ニューエコノミー論を信じた過剰な投資は、結果としてバブルだった。
 さて、2005年の現時点においてバブル経済にあると思われるのは中国である。確かに中国の市場としての潜在的な能力は絶大であり、今世紀の中盤くらいに世界経済の主役になるのは間違いない。しかしそのことと、実体・貨幣が乖離しているということは全く別の問題である。例えば、上海の一等地の地価は急上昇しており今や東京よりも高いと言われている。しかしテナントの入居率はそう高くはないし、賃貸料はむしろ低下傾向にあるという。なぜそういうことが起こるのかというと、土地が利用目的ではなく投機目的で売買されているからである。地価は下がることはないから今のうちに買っておこう、そう多くの人が思うから地価が上がり続けるのは土地神話に踊らされた日本の20年前と同じだ。
 私は、中国バブルが2009年に崩壊すると考えている。2008年には北京五輪が、2010年には上海万博があるから大型投資が見込まれ、それまでは成長が持続するというのが一般的なの投資家の見方だ。そうであれば、万博が終了する少し前に土地や証券を手放して利益を確定させようと考えるのが自然であろう。誰もが売りを考えたとき、バブルは崩壊する。
 もっとも、90年代の日本が青息吐息だったのは、必ずしもバブルだけのせいではなく、その産業構造や旧来のシステムに問題があったためでもある。中国の場合、長期的に見れば上向きの要素が圧倒的に大きいからバブル崩壊のダメージは日本ほどにはならないであろう。むしろ、その機に社会主義市場経済という仮面を脱ぐことができれば、それ以降の成長は加速するかもしれない。一時の状況だけで過大あるいは過小評価をするのではなく、長期的展望をもって隣国の経済を注視するべきであろうし、そういう態度こそがバブルの被害者にならない唯一の方法でもある。