税源と補助金

yosuke0araki2005-06-05

 三位一体改革における地方交付税交付金の削減に対する疑義は前稿において述べた。税源委譲と国庫支出金(補助金)の削減についてはぜひとも推進すべきだと思うけれども、その過程で解決しなければならない課題は多い。
 まずどのような税目を委譲するか。財務省は消費課税を手放さず、個人所得課税を委譲することになる見通しだ。しかし個人所得課税は、法人所得課税ほどではないとしてもベットタウンなどの地域に偏在している。私は、この機に地方分権環境政策と一体として、自動車関連の課税を強化すべきであったと考えている。自動車重量税ガソリン税を地方に委譲した上で、道路目的税を環境目的税に転換して、自動車の使用者が負担する税額を大幅に増やすべきだということである。自動車が負荷の大きい乗り物であり公共交通機関へのシフトが環境に対しては望ましいということ、自動車の地域偏在性が極めて小さいことがこの考えの背景にある。
 補助金を減らすということも、中央省庁の権益に直結するので容易ではない。私は、支出項目ごとに省庁の抵抗を排するやり方よりは、大上段に構えて道州制のような新しい枠組みを提示する方が補助金の削減には有効だと考えている。たしかに北海道をモデルとした道州制構想が行き詰まっている。しかしこの停滞の要因は、分権構想の第1段階が市町村合併であり、第2段階が都道府県合併であり、第3段階が都道府県への権限委譲である(蛇足ながら市町村への権限委譲は、合併後の自治体が政令指定都市中核市特例市などに昇格することにより自動的に実現するため、段階としてカウントする必要はない)ということを考慮に入れていないところにある。いまだ200以上の市町村を包括する北海道において道州制モデルを構築するということは、いきなり第3段階へ跳躍することなのだ。搦め手への奇襲によって戦局を打開するのは大いに結構。しかしそれは正門への定石通りの攻撃、即ち都道府県合併の推進を前提として初めて戦略となりえるのである。そしてその第4段階として補助金の抜本的な削減がある。
 市町村合併の進行度合いは県毎にばらつきがある。私(と高橋はるみ北海道知事)の故郷である富山県においては、南部の過疎地域が富山市南砺市に取り込まれるなどして市町村数は十数個にまで減少したという。包括する自治体が十数個に過ぎないのであれば広域自治体としての意義は小さい。富山県の場合、幕藩期には隣の石川県と共に金沢百万石を構成していた。二県に分割されたのは、明治期において北陸の占める地位が相対的に高く人口規模で7位の金沢と11位の富山を同一県に包括することがはばかられたからだ。包括する市町村の数も相対的な人口も減少した今となっては、富山県と石川県、それに文化的に類似している福井県も併せて北陸三県を一つにすべきであろう。3道が合併を実現することができれば、それを起爆剤にして道州制を一挙に展開することができるかもしれない。
 率直にいって私は、この問題が漸進する見込みは薄いと感じている。知事会が義務教育などの補助金削減に踏み込んで、緒戦は辛勝といえるような成果を得たけれども、中央官庁と地方団体の法的・人的及び経済的な力の差は歴然としており持久戦になればなるほど改革は難しくなるからだ。山を動かすには機を見て世に青写真を提示して支持を得る他はなく、そのためには平時から地方の側がありうべき関係についてのデッサンを温めていなければならない。