循環資源利用促進税

yosuke0araki2005-08-07

 北海道庁は循環資源利用促進税の導入に向けた取り組みを本格化させている。順調であれば9月の道議会において条例が制定されて、来年度から年10億円規模で課税されることになるという。実のところ北海道庁が産業廃棄物を対象に法定外税を導入しようとするのは初めてではない。三重県において導入されてまもない一昨年3月の道議会において一票差で否決されたという経緯がある。捲土重来はなるのだろうか。
 そもそも法定外税が自治体の政策手段として一般的になったのは、99年の地方分権一括法制定により法定外目的税が可能になって以後のことである。それまでも法定外普通税はあったが、普通税の場合には便益が見えにくいため負担者の理解を得られにくいという難点があった。法律を方便にできない以上は税の目的を明確にすることが必要であったのである。しかし一括法は、許可から同意に言葉だけ代えたものの省庁によるチェック機能を残したため、自治体の課税権は中途半端なものになってしまった。同意しなくてもよい場合として3つを列挙している[1.国税又は他の地方税課税標準を同じくし、かつ、住民の負担が著しく過重となること。2.地方団体間における物の流通に重大な障害を与えること。3.国の経済施策に照らして適当でないこと。]が、特に3項については幅広く解釈できるため、ほとんどの場合に総務大臣は不同意をできることとなる。事実、横浜市の場外馬券場の売り上げに対する「JRA新税」構想は国の同意を得られず断念を強いられた。このような状況では課税対象が、総務大臣の同意を得られた先例のある産業廃棄物などにどうしても限定されることになる。
 現状では半数以上の府県で産業廃棄物税などが導入されているけれども、その制度や意味合いは少しづつ異なっている。例えば三重県の場合、税負担者の多くは大阪や名古屋などの業者である。また課税最低限が年100万円と高めに設定されているため、大企業に限定されることになる。県外の大企業を狙い打ちするため、県民の理解を得やすい制度である。これに対して、北海道では道内の業者に幅広く負担を求めることになり、その代わりに税の使途はより狭く限定されることになるようだ。資源だけでなく税も循環する制度になるようだ。
 今回の新税の議論の中では、負担と便益の関係については多様な議論がされているのだが、産業廃棄物の外部効果については計量経済学的な分析が大きく論じられていないようなのが私には不満である。外部不経済の性質を有する産業廃棄物の場合、処理サービスの供給曲線は本来よりも右側にシフトしているのだから、これを政策によって是正する必要がある。始めに各県横並びの1トン1000円ありきではなく、アンケートなどの対人調査によってシフトの大きさを計測するのが市場を補完する行政と税制のあり方なのだ。そしてもう一つ、課税によって需給線上に生じる三角形の経済ロスをどのように捉えるかも明示しなければならない。