松島から

yosuke0araki2005-10-20

 先々週の三連休、総合旅行業務取扱管理者試験のために仙台往復した。実は、去年の秋にも国内及び一般旅行業務取扱主任者試験のために仙台を訪問している。一般旅行業務はたった一問のために不合格となってしまったけれど、今回は雪辱を果たすことができたようだ。そして、もう一つの懸案であった松島遊覧をも果たすことができた。
 松島は、仙台に所縁ある人ならば必ず訪れる超有名観光地だけれども、評判は芳しくない。中学生の頃、仙台に住んでいて松島に親近感を有する私にとって、大人になってから聞く松島の悪評は、信じがたいものであった。14年振りとなってしまったが、ぜひ松島をもう一度訪れて、その長短をはっきりさせたいと常々思っていた。
 なぜ松島の評判は良くないか。その理由についてはすぐに合点がいった。ほとんどの観光客が仙石線本塩釜駅から観光遊覧船に乗り込む。下船してすぐの所の五大堂と瑞巌寺に参拝して土産物屋街をうろついて、松島海岸駅から仙台に帰る。大量の観光客がワンパタ−ンなのである。このコ−スには、景観・体験・歴史・味などの旅を楽しむ要素が一応は含まれている。しかも仙台だけでなく、首都圏からの日帰り客にも対応することができる簡便さを備えている。しかし、この行程ではどこへ行っても人ばかり、人を見ているだけという感は拭えない。ちょっと他人とは違う松島を見つければ、旅は断然楽しくなるし、私は少なくとも三つは必勝コ−スを提案できると考えている。
 1時間あるならば、円通院を旅に加えるべきだ。瑞巌寺の隣にありながら、人はその前を通り過ぎるばかりの円通院。しかし、その庭園は東北屈指の名園である。御堂にはトランプ柄の文様があり17世紀日本の不思議な一面を見ることができる。
 3時間あるならば、多賀城を旅に加えるべきだ。まずは東北歴史博物館で予習して国府跡へ。平安時代には太宰府と双璧であったこの国府の壮大さを体感すれば、奥州=辺境という概念がいかに虚構であるか明らかだろう。多賀城に寄ってしまうと塩釜では、一の宮である塩釜神社を外せなくなってしまうけれど。
 6時間あるならば、遊覧船は止めて塩釜市営汽船に乗ってみよう。八百八島と言われる松島には実際、二百余島があるけれど、そのうち数島には人が住んでいる。市営汽船は、これらの島を結ぶものであり桂島・野々島・寒風沢島・朴島は、それぞれ個性的で飽きることはない。ついつい引き返さず奥松島に渡る誘惑に駆られるのではないだろうか。
 さて、有名観光地であればあるほど、型どおりの順路ができて奥深い魅力を減殺するというのは何も松島に限ったことではない。皮肉なことに、行政その他の団体が観光に力を入れれば入れるほど、旅人のちょっとした発見や満足の機会が失われてしまうのだ。そうならないために必要なのは、旅の情報を常に更新していくような対応である。大々的・定期的に旅プランのコンペを開催して、庶民の視点により新しい名所を発掘していくというのも有意義なことだろう。あるいは、考古学などの研究を先行させて、地域の学術的な魅力を引き出すことにも大きな可能性がある。観光客の誘致にあたっては、第二の松島を作らない様々な試みが求められる。