理由

yosuke0araki2005-11-06

 明後日、テレビ放映される「理由」を読んだ。同書は「龍は眠る」「返事はいらない」「火車」「人質カノン」「蒲生邸事件」が候補作となった宮部みゆき直木賞受賞作である。嗜好が純文学に偏っている私にとっては、大衆文学に接するということ自体が事件であり、宮部作品は火車に次いで二作目となる。
 「火車」が多重債務という社会的な事象を題材としたのに対して、「理由」のそれは執行妨害であった。作品の楽しみ方としては飛躍しすぎているのかもしれないが、スト−リ−を追っていく中でも民法第395条の短期賃貸借についての条文が私の中からは離れなかった。
 平成15年の民法典現代語化を機に第395条も改正された。旧法においては土地5年・建物3年以内の短期賃貸借であれば抵当権に優先するとされていたが、この条文の適用範囲をめぐっては対抗要件として賃貸借にも登記を要するかどうかで判例も動揺していた。優先すべき賃貸借の範囲を大きくとった平成3年の最高裁判所判決は、国家公務員一種試験でも出題されるなど関心を集めたが、平成10年秋の判決において判例変更されている。大学の民法2の講義において、池田清治助教授が平成3年判決を解説し、類似の事例において大法廷回付があったことを指摘された、その日の夕刊において判例変更が報道されたから、特に印象が深い。短期賃貸借の広範な悪用可能性を前提に占有者をサスペンスの中軸においた「理由」。朝日新聞社から刊行されたのは平成10年夏のことであった。
 判例変更の理由としては、もちろん法的な解釈があるけれど、この数年間で不動産価値が下落したという経済的な背景もあるだろう。バブル崩壊後しばらくは高値を維持していた不動産もその後は十年にわたり下落を続けている。これは流動性の低い不動産の特性が景気動向にも反応しにくいからだろう。このような中、流動性を阻害し下押しの圧力となる短期賃貸借の悪影響は看過できるものではなくなっていた。私は、そういう前提で「理由」を読んだ。
 ところで私は、資格と証券に関心を持っている。公務員試験の勉強を卒業してからも、何らかの目標を設定することで法律学と経済学に対する関心を発展させていきたいと考えていた。国家資格の多くが法律を出題範囲に含むものであり、株式などの運用が日本経済新聞をおもしろくするものなのだ。
 そして資格と証券の道のいずれも目指す先は不動産。とりあえず宅地建物取引主任者管理業務主任者マンション管理士を取ろう。行政書士すらないのに革算用だけれども、司法書士土地家屋調査士を取れれば食っていけるかな。バブルの半値でようやく地価も反転の兆しがあるしREIT(不動産信託)にでも投資してみよう。アメリカに40年遅れて可能になったこの不動産投資に日本再生の夢を託そう。私のバブリ−な夢だけは、先週に引き続いて果てしないものである。