開発局をどうするか

yosuke0araki2005-12-25

 平成15年の総選挙において自由民主党の公約となった道州制であるけれども、ここのところ全く進展がない。政を掌る者は機を見るに敏でなければならず、不本意な部分はあっても、首相の発言に連続して何らかの合意を得るべきであった。二段階統合論に拘泥して国の行政組織を取り込まなかった北海道庁側の方針こそが、この議論の大きな障害となってしまった。
 北海道庁が二段階統合を主張したのは、破綻寸前の財政のためである。このような状況で、国のリストラのツケを肩代わりさせられるように能率の落ちた各機関を取り込めば、財政健全化に逆行することになる。財政再建団体に転落することは自治の放棄であり、道州制の目的とは矛盾することになるのである。だからまず国の機関同士を統合して、国としてのリストラをした上で、北海道庁との統合を図るべきだというのである。
 その意図するところはもっともだけれど、据え膳でなければ喰わないというのでは、合意をみないのは当然だろう。だいたい北海道庁案では統合まで10年を要するけれども、その間に政治性の強いこの問題は常に政局の波に曝されることになる。かつて北洋銀行は、破綻した北海道拓殖銀行の受け入れ先となることで経営危機を指摘されながらも、規模の効用によって北海道銀行などをいつのまにか凌駕していた。北海道庁もまず国の機関のいくつかを統合して、それを契機に自らの組織をも合わせて再編していくべきであった。
 ここで留意したいのは北海道にある国の機関のうち、北海道開発局の特殊な位置付けである。知事が在籍した北海道経済産業局など多くの省庁が出先機関を有しているけれども、それらは全国にあまねくある機関の一つに過ぎない。しかし開発局のみは、革新系の田中知事の再選を機に、政権与党の後ろ楯により北海道土木部を母体として創設されるという、極めて政治色の強い歴史を有している。革新系であったということだけでなく、それ以後の知事の衆議院議員事務次官衆議院議員・副知事・経済産業局長という華やかな前歴と比較して、初代田中知事が北海道林務部の一係長に過ぎなかったということが御家騒動を大きくした一因だったろう。そういう分裂によってできた組織なのだから、開発局についてのみは道州制云々の以前に北海道庁に返還すべきである。本来ならば、北海道開発庁国土交通省北海道局に成り下がった時点でそういう議論は煮詰めるべきだったろうけれど。
 道州制らしい議論として重要になるのは、開発局の管轄になっている主要国道の管理権を引き継ぐことができるかどうかということ。これができれば道路特定財源の委譲を主張する名分が立つ。道路特定財源としては、国税としての自動車重量税ガソリン税地方税としての自動車取得税軽油引取税がある。これらを北海道庁のもとに集約すれば、車検時徴収の重量税と一般財源自動車税を組み替えるなどの柔軟な税制を提案することができるかもしれない。
 知事は記者会見でピンチをチャンスに変えるということを述べられるけれども、今の北海道は財政再建団体へのピンチと道州制へのチャンスの混在する状態といえる。そして今年はデフレ脱却に沸く国内景気とは対照的に、ピンチがチャンスを浸食し、われわれの給与10%賞与15%削減ということまで決定された年であった。さて、来年はどういう年になるのか。薄給でもいいから、夢のある組織機構を早く打ち立ててほしいと私は思っているのだが。