早期勧奨退職制度

yosuke0araki2006-04-02

 防衛施設庁の談合疑惑について、技官のトップが逮捕された。新聞報道などによれば、この談合は、天下り先の確保を意図してなされたものだという。公務員が、その官公庁と特別な関係にある民間企業に再就職する天下り。これをめぐる汚職は、最近に始まることではない。2年は関係先への天下りを禁止する法改正も、特殊法人などを間に組み込むことで、制度設計の実効性は減退した。
 天下りに対して、このように世論が寛容なのは、一種採用職員の早期勧奨退職という慣習の存在を承知しているからだろう。民間企業であれば60歳まで勤務できるのに、彼らは早期に退職させられるのだから、60までの期間は、天下りを許容してもよいという論調である。
 しかし、私はむしろ早期勧奨退職そのものが、悪しき慣習であり、速やかに改めるべきであると考えている。
 早期勧奨退職という慣習はどのように形成されたのか。その理由の第一は、戦前期においては政治家と官僚が連続したものであったということである。例えば、各省大臣にしても、高等文官試験に合格して任用された者が、各省次官を経て、国会議員にならずに到達するのが一般的であった。このようなシステムにあっては、政の領域を上位に確保するために、次官以下の官の領域の年齢は抑えられねばならなかったのである。しかし、今日の議会制民主主義の下にあっては、政治家を志す官僚は、若いうちに機をみて途中下車するのが一般的である。政と官が全く別の道である以上は、官の領域が定年まで高くなっても問題はない。
 早期勧奨退職の理由の第二は、霞ヶ関が激務を強いられる職場であるため、体力的に充実している年齢のうちに退職させた方が、組織としての機動力を維持できるということだそうだ。しかし、それは職場環境を改善することによって解決する問題であり、だから退職させるというのは本末転倒している。
 早期勧奨退職では、同期採用の職員が事務次官になるまでには、他の職員は全て退職する。横並びで昇進させ、ポストが少なくなるたびに間引いていくというシステムである。同期に気兼ねせず、思う通りに仕事をしてほしいというのが、この趣旨だそうだ。しかし、同期に職制上の縦関係があったからといって、それが組織を非効率にするものだろうか。ちなみに、私の勤務する北海道庁では、若いうち年齢横並びでゆっくり昇進するが、最後の十五年は、同位に留め置かれる人から四階級も上位に昇進する人まで様々である。見聞きする多くの組織においても同傾向であり、それは底辺が長く頂点は一つしかない組織のピラミッドという形からして、おそらくやむをえないことなのだろう。同期がどうという感傷よりも、組織の特性を優先して受けとめるべきである。

 もちろん、早期勧奨退職を止めてもポストの数は増えないから、一種職員の人生設計としてみたとき、若いうちの昇進ペ−スが十年近く遅れることになる。しかし、道課長級では約18年、道部長級でも約14年ある北海道職員との昇進ペ−スの差を思えば、それくらいゆっくりさせても構わないのではないかと考えてしまう。国家公務員の定数5%削減というような喫緊の課題には逆行することになるが、歴代の内閣も手をつけることのできなかった退職慣習だけに、ぜひ政治の力で改めてほしいものである。