北海道サマータイム

yosuke0araki2006-07-15

 北海道サマータイムの試みは今年で3回目を迎えた。人為的に時間を変更するというのは妙な感覚だし、個々が早寝早起きの習慣を身に着ければそれでよいようにも思える。しかし、少し考えてみると北海道でサマータイム制を導入するのは面白いかもしれない。
 まず、欧米諸国ではサマータイム制の方が主流派だということである。世界15大経済大国のうち、未だサマータイム制でないのはインド・中国・韓国・日本の4ヶ国のみである(アメリカでは、ごく一部の州のみサマータイム制ではない)。そして地理的にみても、北海道は明石を通る135度線よりも、むしろ南北千島の間を通る150度線に近い。高緯度のため日照時間の季節変動幅が大きい。札幌商工会議所の受け売りのようだけれども、北海道は世界の潮流の中で日本で最初にサマータイム制を導入すべき地域である。
 サマータイム制の最大の効用は経済波及効果だろう。しかし、それはレジャーおよび観光産業に対する個人消費の増加というような性質のものではないと思う。都市社会では、夕方だろうが夜間だろうが人は照明を用いて気ままに活動するのであり、目先の物珍しさはともかく、長期的にはレジャーの時間も増加しないからである。むしろ重要なのは朝である。
 話は飛ぶけれど、ウエリントン証券市場には各証券会社のエース級の人材が集まるそうだ。人口400万にも満たない絶海の孤島であるニュージーランドに各社が頭脳を送り込む主たる要因は時差である。週末に大きな事件があった場合、その事件を織り込んで最も早く月曜の取引をできるのは、日付変更線のすぐ西にあるウエリントン市場なのだ。北海道はサマータイム制を導入してもウエリントンには勝てない。しかし、冬時間のシドニーメルボルンとは同時に営業できることになる。つまりアジアの先導市場となるのであり、この地理的優位を生かせば札幌証券市場は東京証券市場を脅かすこともできるだろう。そういう早い朝の効用はもちろん証券市場だけではない。デパートの初売りも北海道が最初。アジア経済の全てが北海道から始まるのだから、その経済波及効果は甚大である。
 むろん、今のような中途半端なやり方では、波及効果などあるわけもない。私の職場はこの時期、1時間早く開庁するけれど、道民生活に不便はかけないとかいう理由で閉庁時間は今までどおりだから、単なる労働強化でありサマータイムと称するのもおこがましい。道庁などは論外にしろ、法律を変更しないで、サマータイム制の運用を図ろうというところに無理があり、まず法制面での制度設計をする必要がある。
 そのとき、私が思い浮かべるのは道州制法案。この法案が、制度の枠組みを構築したといいながら、道民生活とは遠いわずか8つの権限の委譲に止まったのは周知の通りである。サマータイム制ならば各省庁の権限を侵すものではないけれど、道民生活への影響はきわめて大きい。これを8つの権限委譲と組み合わせる形で道州制法案の俎上に載せたなら社会的な関心は一気に高まろう。道州制法案について前国会での立法できず、継続審議になったのを逆手に、そういう提案ができればいいのだけれども。