夏の高校野球

yosuke0araki2006-08-25

 南北海道選抜の駒澤大学苫小牧が3連覇を賭けた今夏の甲子園は終わった。札幌の街角のあちらこちらには「駒大苫小牧感動をありがとう」の垂れ幕が下がっている。同感である。つい最近まで、優勝旗は白河の関を越えたことはなかったのだ。東北各県の有名校を差し置いて、初優勝したのはわずか2年前。涌井秀章を擁する横浜高校などの強豪を破っての栄冠だった。そして桑田真澄清原和博PL学園ですらなしえなかった夏連覇。辻内崇伸平田良介大阪桐蔭など強豪を破っての栄冠だった。これだけの偉業にも関わらず、道外では必ずしも評価の高くなかった今年、敗れたりとはいえ三度決勝に勝ち進んだ。決勝が歴史に残る好試合であったことで、ハンカチ王子こと斎藤佑樹の敵役としてではあるが、強豪駒大苫小牧田中将大は日本中に定着したのではなかろうか。下手に三連覇などして、連勝の終わりにさえない試合をするより、再試合の惜敗ははるかによかったと思う。あとは、二度にわたった不祥事で後味の悪さを残した去年の轍を踏まないことを祈るばかりである。
 早稲田実業の斎藤に、三沢の太田幸司を重ね合わせたオールドファンも多いのではなかろうか。冷静に見れば、斎藤はそれほどの美少年ではないと思うのだけれど、控えの投手がいる相手チームと対照的に独り4連投しきったのは好感度が高いのも当然だろう。問題は、これからどうするか。早稲田大学もプロも、斎藤ならば行き先に困ることはない。しかし、これだけ日本の注目を一身に集めるような瞬間は今を置いて他にはない。選択権のある今こそ、プロでやっていけるのか、また大リーグへ行きたいならどうすればいいのか、緻密に検討してほしいと思う。
 決勝再試合のために印象が弱まったが、今夏は投低打高が顕著だった大会だった。とりわけ本塁打数については早々に大会記録を更新した。本塁打が多いと、シーソーゲームの醍醐味はあるし、もちろん金属バットなどの環境要因もその理由にあげることができるだろう。しかし、投手が打者を封じ込めることがあるからこそ、その均衡が破れたときが面白いのであり、打高が行き過ぎるとバッティングセンターで交替制の打ちっぱなしをやっているような大味感になってしまうのも否めない。

 テレビ観戦できるスポーツのうち、私が最も好むのは高校野球である。プロと比較すると当然ながら技術の差は歴然としているけれども、プロが百試合以上にもわたって長期的展望の下で試合するのに対して、高校野球は一度でも負けたら終わりである。しかも人生で三度、多くの選手にとって3年生の一度きりの甲子園とその予選なのである。そういう中での全力勝負で偶発的に生じるドラマには胸を打つものがある。パリーグプレーオフ導入など、プロも試行錯誤しているようではあるのだけれども、客離れが止まらないのは、そういう真剣さがファンに十分には伝わっていないからだと思う。プロが初心に返って高校生から学ぶことは多いのではなかろうか。

 次のドラマはドラフト会議。春に向けた北海道大会にも注目したい。