産業別構成比

yosuke0araki2007-03-18

 国内総生産と道内総生産の産業別構成を対比することは、北海道経済の症状を診断する上で不可欠のことである。いずれも平成15年度の内閣府「国民経済計算確報」及び北海道「道民経済計算年報」によれば、製造業は全国20%に対して北海道はわずか10%、つまり半分しかない。製造業こそが道内経済の鍵となることはこの数値から明白である。重厚長大型の苫小牧と軽薄短小型の新千歳は製造業の立地として申し分ない。札幌・新千歳・苫小牧を結ぶラインを軸に製造業を展開する以外に、北海道経済の現況を打開する方策はない。
 これに対して、金太郎飴のように全国一律の産業比にするのではなく、北海道の独自性を活かして得意な産業を強化していくべきだという主張がある。農林水産業のことを指すのであろうが、これは全国1%に対して北海道3%である。3倍もの構成比を占める得意産業であるにも関わらず、製造業の空けた穴の2割を埋めるにすぎない。得意産業の強化という人は、全国平均の3倍の水準にあるものが政策の如何によっては10倍になるとでも言うのだろうか。公共事業により建設業の一次産業へのソフトランディングを図るなどという主張は、聞こえはいいけれど、ヤドカリが成長したので今までより小さい貝殻を探すというのに等しい。配点の小さい得意科目をマニアックに勉強するよりも、配点の高い苦手科目で底上げを図るほうが点に直結するということぐらい、大学受験の高校生でも分かりそうなことなんだけど。ついでに製造業10ポイントの穴を埋めているのはどこかとみると、農林水産業2ポイントの他は、建設業2ポイント(全国7%・北海道9%)、政府サービス(全国9%・北海道15%)となる。得意産業云々というなら、行政サービスに特化して高福祉高負担の極左政策を選択すべきことになる。このように考えると、選挙などにおける政策論争がいかに具体的な数値から乖離した観念論に陥っていることがよく分かる。
 具体的な数値に基づいて農林水産業より製造業の助成をなどと主張しようものなら、外から移住してきた北海道のことをよく分かっていない人という、意味不明な批評をされ、それが何故か説得力を持ってしまう恐ろしさが政治にはある。その最大の要因は、数値の軽重を政策判断の基礎としない民意の欠陥にあるのだろう。高橋はるみ荒井聡の両氏による実質的な一騎打ちになることが想定される来月の北海道知事選挙、候補者の主張を見聞きすることが大切なのは当然のことだが、その主張の根拠となる数値がどれほどの意味を持つのか、有権者はまずそこから議論を始めるべきだと思う。