傷城

yosuke0araki2007-04-19

 中国旅行中の1月、行き掛かりで立ち寄った合肥という街で「傷城」という映画をみた。たしか20元(約300円)だったと思う。主演は金城武トニー・レオン。アクション映画など滅多に見ない私が、この映画を選択したのは日本語が聴けるかもしれないという、初歩的な勘違いからであったが、結果的には言葉が分からずとも何とか筋を追うことができて良かったように思う。日本でも浜崎あゆみの主題歌で公開される予定だということだったが、残虐シーンが多い難ありとはいえ、香港の物悲しくも美しい風景が十分に堪能できるレベルの高い作品なので、その折にはみてもいいかもしれない。
 ところで私は、邦画をほとんどみない。英語の習得という目的があるため洋画DVDのみ視聴するのだけれども、少々食傷気味である。私の不満を集約しているような存在なのが「ハリー・ポッター」と「ロード・オブ・ザ・リング」の二大ヒット作品。子供にも安心して見せることができるということは、裏を返せば映画のきわどさに由来する迫力を削ぐことを意味する。想像力の欠如のためか、エイリアンなどの生物がどの映画でもほとんど同じである。続編をだすのは大いに結構なんだけど、当初の人格や人間関係に依存してしまうため、マンネリ感が漂うなどの問題がある。具体例をあげるなら、原作のイメージ通りだったのは、声変わりする前のハリーだったのに、相も変わらず同じ3人組を真ん中に据えているだけなので、却って原作から大きく乖離しているということも言える。
 しかし近年も、なかなか深い示唆に富んだ作品が散見されるようには思われる。私が薦めることができるのは5作品。「ナルニア国物語 第一章:ライオンと魔女」は、空想の世界が映画の中に織り込まれているので、SF慣れしている人間にもその不思議さは新鮮に映る。「チャーリーとチョコレート工場」は、現実離れしながらも、誰もが夢想することを具現化しており妙なリアリティーが心地よい。「トロイ」は、イリアスのイメージ通りで、とりわけヘクトールの存在感は見ごたえがある。「パイレーツ・オブ・カリビアン」は、ジョニー・デップがくさすぎるきらいはあるが、王女の気品を際立たせる仕掛けが幾重にも施されていて美しい。「スパイダーマン」は、今までのヒーロー像よりも人間的な弱さを多く有している点に好感がもてる一方で、キルスティン・ダンストの小憎らしさも記憶に強く残る。
 最近、映画館での洋画の劣勢が伝えられる。しかし、外国映画は外国語をはじめとして、外国文化に触れる大きな窓になりうる。そういう洋画の魅力を、これからも大いに受けとめていきたい。