世紀央の風景

 BRICsリポートが出たのは2003年。今のところ、リポートの通りに世の中は動いているし、これを超える理論も見当たらない。私は、この4ヶ国が併走するというよりは、ブラジルを除いた3ヶ国のうちいずれかが、2050年には突出した地位を築くと考えている。
 今世紀中頃の世界がどのようになっているかを考えるとき、私は3つの可能性があると思う。第一案は、前世紀末のインターネット普及以来、急速に役割を拡大させているIT産業が、その進化を加速させ、経済の主役としての地位を製造業から奪取するという可能性である。この場合、ITを支える英語と数学の基礎学力に秀でる人材の豊富なインドが、世界経済の担い手となる。第二案は、ITの影響を享受しながら製造業も進化し続け、主役としての地位を維持し続けるという可能性である。この場合、世界の工場として稼動する中国の役割がさらに拡大していくことになる。第三案は、製造業の負荷に地球環境が耐えられなくなって、現在のような成長というものが期待できなくなる可能性である。環境の悪化は資源の価値を高め、ユーラシア大陸を覆う資源大国のロシアが経済的な優位を得ることになる。
 五十年後のことなど想像もつかない。しかし、ITか製造業か資源かと考えれば、確信を得られずとも今後の組織体のあり方に関わる議題に乗せやすいのではないかと思う。私自身についていえば、第二案のとおりに進む可能性が高いと思っている。ITは虚業であり、そこから何かを生み出すものではないから農から工業へというような代替のきくものではないし、製造業は環境負荷を大きくする方向だけでなく小さくする方向へも発展の可能性が残されているからである。しかし、大事なのは択一することではなく3パターンのいずれにも対応できる準備を整えておくということである。
 北海道についてみると、製造業の弱さが致命的であるとともに、ネット社会への不信感ばかり強く、現状ではIT経済化にも遅れをとるように思われる。地球温暖化が進展すれば穀倉地帯は北上し、資源高と相まって棚ボタ式に存在感を増すことにはなろうが。世界はどこへ向かっており、地域はその潮流にどう対応するのか。グローバルに考え、ローカルに行動するという姿勢は、未来を描くときにも不可欠なのである。