NOVAの破綻

 NOVAが破綻した。私は、5月にレッスンを終了してボイス会員という利用者であるが、数万円分のボイスチケットの債権者でもある。
 仕手筋の関与が指摘された今年9月の切り返しなどはあったが、NOVAの株価は3年前の525円から破綻後の10円台までほぼ一貫して下落していた。しかし、その破綻の直接的な原因となったのは今年6月の経済産業省による業務一部停止処分だった。私は、この処分そのものは不適切なものだったと思う。消費者が解約を申し出た場合、5万円の手数料最高限度額以外は未利用分に相応して返却しなければならないという消費者契約法の趣旨にNOVAが反していたというのであるが、大量一括販売によるディスカウントの後に消費量比例で払い戻させることができるのであれば、私のように最初から少量しか購入していない者は損だということになる。大量販売によるディスカウントそのものは社会で一般的に行われていることであり、消費者契約法の制定によりそのビジネスモデルが成り立たなくなったということであれば、経済産業省は、法を所管する官庁として行政指導を徹底すべきであった。それをせずに、裁判が頻発する段階になって業務停止処分というのは理不尽であったと、私は考えている。
 しかし、NOVAの経営陣は、法的なものより、むしろ会計上の大きな責任がある。それはポイント制をとっているNOVAにおいて、ポイントとは金銭の授与と引き換えに支払われるものであり、英会話サービス提供の未履行を示すものであるから、会計上は明らかに負債である。ところが、事業の拡大期においてNOVAは、生徒数の増加によるポイント販売の増加を単純に収益として捉えた節がある。負債と収益は、一見すると全く別のもののように思われるが、複式簿記においては同じように右の貸方側に仕分けられるのであり、その区別は微妙である。しかし、事業の拡大とポイント販売を相乗させたNOVAの経営は、借金をしながら投資し、その投資により担保価値が上がったので、さらに大きな借金ができるようになるという循環で表現されうる。このような放漫経営が遅かれ早かれ必ず破綻するのは、今になってみれば明らかである。
 さて、これからどうするか。事業の継承先として楽天やイオンなどが挙がっているがいずれも消極的であるという。また、英会話学校の全生徒数の6割にもなるNOVAを継承する体力は、同業他社にはないものと指摘されている。しかし、1000校という安易な数値目標を定めて全国津々浦々まで進出しようとした身の丈に合わない経営に問題があったのであり、英会話の需要そのものがなかったわけではない。何といっても400万人にものぼる生徒は(今回の騒動で大半が離れていくにしろ)、ひとつのビジネスチャンスを示していることは間違いない。再生できるかどうかは一ヶ月が勝負という。その行方を注視していくことにしたい。