成田空港

 今月、フィリピンへ行ってきた。就職してから5年余で8回目の海外旅行であり、休みをもらえるのは有り難いことである。
 しかし、毎回、辟易させられるのは、羽田空港と成田空港の距離である。最近では、少しでも海外にいる時間を長くするため、勤務終了後すぐ北海道から羽田へ飛び、翌日の朝の便で成田から出国することが多くなった。しかし、そういう工夫によっても、数時間を要する空港間の移動は、飛行機以上に負担になるものだ。それなら、国内線と国際線が同居する中部や関西を利用すればいいようだが、そうもいかない。国際線の便は圧倒的に成田が多いため、地上輸送区間を差し引きしてもダイヤ上は成田の方が便利になってしまうのである。何とかならないものなのかと思ってしまう。
 そもそも仁川や香港などの空港が急速に整備されていく中で、日本のハブ空港を、東京の名を冠するべきでないような田園地帯の成田に置くこと自体が奇妙な話である。私は、高度経済成長を遂げる東アジアの中で、新たなハブ空港を提案すべきだと考えているが、それは中部でもなく関西でもなく新千歳である。
 この提案について、私が北海道職員であることを差し引きされることには異を唱えまい。しかし、世界地図ではなく地球儀上、アメリカとアジア、ヨーロッパとアジアを糸で結んだとき、この提案には大きな意味があることが明らかとなろう。すなわち球体の性質上、長距離移動の際は高緯度地域の方が移動効率がよい。新千歳は、成田とロンドンを結ぶ直線上にあるのだ。東アジアの中で相対的に北方である日本が、その比較優位を生かすためには、新千歳は絶好のロケーションである。新千歳から欧米への道が開かれれば、新千歳こそが日本だけでなくアジアの玄関口としての役割を担いえる。
 新千歳の優位性は、これだけではない。現在でも新千歳と羽田の間は15分に1便という世界一の過密路線となっている。15分に1本は、成田と羽田のバス路線と同程度であり、1時間半の所要時間からいっても、羽田との交通の便はひけをとらないのだ。世界一の路線で国内線の羽田と国際線の新千歳をつなげば、東アジアの諸空港に対して大きな優位性を持つことになろう(アジア路線は九州にハブを置いて、福岡・東京・札幌のトライアングルというのもありだろうけれど)。
 以上のようなことは、誰でも思いつきそうなことだし、航空機の性能が低かった成田空港設計の時代にこそ考えられるべきだったと思うが、そうならなかったのは国防上の理由かもしれない。ソビエトが仮想敵国だった冷戦時代、要になるような空港を北海道において、万一の場合にそれが占拠されたならば、国の命運は決してしまっただろうから。しかし、そんな時代は終わった。今からでも遅くないから、新千歳空港の魅力を北海道ということではなく、地球レベルで見直すべきである。