財布の管理

 景気が一向に良くなる気配のないまま、既に金融危機から半年が経ってしまった。財政危機のため、われわれ北海道庁の職員は給与削減が続けられているが、今度は賞与の方も雲行きが怪しくなってきた。まあ、給料分の働きをしているかと叱られればうなだれるしかないし、このご時世なにを贅沢なことをと言う向きももっともなのであるが。
 入るを計りて出を制すというのが、サラリーマンの場合、入るほうは会社との関係次第なのですぐにどうにかなるものではなく、家計を管理することは概ね出を制することと重なる。私の場合、三つの家計管理策を併用することにしている。
 第一はクレジットカードの多用。私の使っているJALカードでは、200万円分の決済をするとそれだけで2万マイルすなわち中国往復航空券が入手できるようになっている。よくマイルをためる裏技などの本を目にすることがあるが、特殊な裏技よりも百円単位の買い物でカードを切る単調な動作が旅行への早道だというのが私自身の実感である。就職してからマイルをためての海外旅行は既に4度。また円高のメリットを享受しにいきたいものだ。
 第二は携帯電話のメール送信機能の活用。自分で設定したポイントを、宛先未定のメール原稿を更新するという形で、起床時に50ポイント足し、百円使うごとに(33円以下は切り捨てて34円以上は切り上げ)1ポイント引いていくことにしている。これは、1日の使用可能金額を5000円として翌日に繰越可能というシステムだが、このルールを厳守する限り、月換算で15万円と年換算で180万円を超える支出はできなくなる。大きな買い物も繰り越したポイントの枠内ですることに決めているが、ポイントを貯めることそのものに愛着がでてくると不急の出費は惜しくなってしまう。
 第三に新札の束の活用。現金が入用の際は、十万円を口座から一度におろしてナンバーが揃った千円の新札百枚に替えてもらうことにしている。銀行の両替費用は105円だから、もちろん携帯メールの数値は1ポイント引いて更新する。わざわざ手数料を支払うことは奇異に見られることもあるが、汚いお札を触るよりもきれいなお札のほうが気分がいい。重要なのは、お札のナンバーの下2桁を見るだけで手持ちの現金がいくらあるか知ることができるということである。毎日お札を数えなくても千円を使うたびに自分の手持ち現金の金額を意識することが習慣となる。
 ここに挙げた三つは誰に教わることもなく何となく習慣化している私自身の癖のようなものであるから、他人が同じことをしようがしまいが私には関心がない。それにもかかわらず、あえてここで挙げたのは、会計管理の原理に即したものであると自負しているから。携帯電話の日50ポイントチャージは、あえていうなら毎日決算をしていることを意味している。日単位で支出の穴埋めをしながら収入との均等を要求されるからだ。しかし、キャッシュフロー貸借対照表損益計算書とは別に管理する必要があることから、これを新札によって把握することにしているのだ。そのような二重の審査をしているから、クレジットカードの使いすぎで破綻などということは私にはありえない。
 出を制すといっても、それはただのケチということではない。財布の中を負担にならないように管理していくことこそが大切なのである。それで確かに私は支出を抑えることができたが、カネがたまったかって?金融危機で持ち株が大暴落してしまいましたよ。