家畜と果樹と

 一昨日11月19日は、農業協同組合法が公布されたことにちなんで農業協同組合の日とされている。私は、役所で農業協同組合農業共済組合に係る事務を担当していることから、なにがしかのイベントに参与できるのかと期待したのだが、肩透かしに終わった。しかし、家畜共済と果樹共済を分担している者として記憶すべき楽しい日にはなった。
 まず、最終日を迎えた北海道競馬。私は農政部へ来るまで、25%を控除されるため期待値0.75の競馬には全く関心がなかった。まあ、期待値0.5の宝くじよりはマシという認識はあったが。夏頃、試しに数枚を買ってみたが当たりはなし。それが15頭立ての最終第12レースで本命コパノカチドキの単勝280円を当ててみて、わりとおもしろいかもしれないと思った。場外馬券売場の大画面でみる限り、賭けることよりもスポーツ鑑賞としての側面が大きい。その馬の、その騎手の背景を知ることで、勝負の一瞬に愛着ができる。馬券は、その愛着を形にするためのスパイスに過ぎないから、道営競馬には申し訳ないが重賞レースに百円賭けるだけで充分。あとはスポーツとしての関心さえあればよい。
 そして、解禁日を迎えたボジョレヌーボ。高級ワインのように熟成させることができないこのブランドは、やはり有り難がって飲むような代物ではない。しかし、初物好きの国民性や、鋭くない日本人のワインの味覚なども相まって、ボジョレは欧米以上に浸透している。私も、やはり舌には自信がなく、おまけに酔いやすい体質ときているが、雪のちらつく街角のセイコーマートで一瓶を求め、レース後の時間を楽しむことができた。
 実は、この日は札幌大学孔子学院の中国語の授業の日。勉強もせず残業もせず、賭け事と一人酒というのは、自虐的な日記となる。しかし、業務に関連するところに楽しみを見出すというのは、もっとも能率よく仕事をする秘訣だと私は思う。よく、一番の趣味は仕事にしたくないと言う人がいるが、逆は不可なり。仕事を趣味にすることそのものは問題なかろう。まあ、賭けて呑んでというのが、どうして農政に活かせるのかという本質的な問題は置いておくとして。
 家畜と果樹の話からは逸れるのだが、農政部へ異動してきてから、ベランダのプランターで作物の栽培を始めた。タアサイ、インゲンそしてジャガイモ。期せずしてアブラナ科マメ科とナス科を選択し、入門の一年目としては充分に楽しませてもらった。もっとも、経験としてではなく、食物としての収穫は、長雨の影響やベランダの構造ゆえの日照不足もあり、思ったほどの収量にはならなかったが。それでも、自分が育てたものを自分で料理して食べるのは新鮮なことではあった。残念ながら、冷涼な北海道の気候では、半年以上も土を寝かせておくしか術はなく、次の栽培は雪解け後となる。来年は、ぜひ水稲をやってみたいと思っている。
 檜山支庁でも労働委員会でも、不満がなくはなかったが、そこならではの楽しみ方があった。あと30年ある社会人生活の中で、異動の度に趣味を増やしていけば、老後も時間をつぶせなくなることはなかろう。もっとも、海外旅行というカネのかかる趣味を持つ私にとっては、あまりカネのかからないというのが永く楽しむために必須の条件なのであるが。